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ニューヨーク不動産仲介のトップチーム
東京の不動産事情はニューヨークとよく比較されますが、不動産仲介ビジネスは、アメリカと日本では大きく異なるのをご存知でしょうか。その不動産仲介システムに大きな違いがあることは、意外と知られていません。
当記事では、その不動産仲介システムの日米の違いについてお話しましょう。
日本における不動産取引は、いわゆる「不動産会社」が仲介役となって行うのが一般的です。皆さんご存知の通り、不動産会社の担当者に相談して仲介を依頼します。
一方、アメリカでは、不動産ブローカーと不動産エージェントの2つが存在します。日本では不動産会社に依頼することが多いと思いますが、アメリカでは、不動産会社ではなく、個人=「不動産エージェント」に依頼するのが一般的です。この点が最も大きな違いです。
さらに、アメリカの不動産エージェントには、「バイヤーズエージェント」と「セラーズエージェント」が取引に関わります。つまり、売り手側のエージェントと、買い手側のエージェントが不動産取引を仲介するという形です。
では、どうやったら不動産エージェントになれるのでしょうか。アメリカでは、州ごとにライセンスを取得する必要があります。これは、日本の宅建のように永久資格ではないので、ライセンスを維持するためには、2年毎に講習を受けなければなりません。
さらに、セールスパーソンは、ライセンスを取得すればすぐに活動できるわけではありません。必ずどこかの不動産会社(ブローカー)に登録する必要があります。登録して初めて、その会社の不動産エージェントとして営業活動を行うことができるのです。
ニューヨークの場合、75時間ほどの講習を受けて州のテストにパスすれば、誰でもセールスパーソンのライセンスを取得できます。英語を母国語とするアメリカ人であれば、それほど難易度の高いテストではありません。たいていは1, 2回ほどでパスできる程度の内容となっています。
日本では、不動産賃貸業や賃貸管理業であれば、特に免許や資格は必要ありません。しかし、不動産仲介業では、「宅地建物取引士」、国家資格である「宅建」に合格し、都道府県知事による登録を受ければ、活動ができる仕組みとなっています。
それ以外にも、開業に有利な資格として、「マンション管理士」や「不動産鑑定士」、「土地家屋調査士」、「司法書士」、「ファイナンシャルプランナー」などが挙げられます。
不動産仲介エージェント(営業)システムのアメリカと日本の大きな違いの一つに、すべてのエージェントが「フルコミッション(完全歩合制)」である点が挙げられます。
アメリカの不動産エージェントは、基本的に固定サラリーがありません。売上げをあげることができなければ、当然、報酬はゼロになります。
先に述べたように、比較的簡単に取得できるライセンスですので、アメリカン・ドリームを抱く多くの人がこのライセンスを取得します。しかし、大変なのはライセンスを取得してからです。
不動産エージェントになれたとしても、このフルコミッションが大きな障壁となります。ニューヨークは競争率が非常に高いため、エージェントの生存率は10%以下と言われています。つまり、10人に1人しか生き残れない厳しい世界なのです。
では、不動産会社(いわゆるブローカー)とエージェントとの関係性はどうなっているのでしょうか。不動産会社とエージェントの関係は、「インディペンデントコントラクター」=日本で言う「個人事業主」として、会社との雇用契約を結ぶ形になっています。
ライセンスを取得したら、どこかの不動産会社に登録しなければならないと先に述べましたが、いわば、エージェントは不動産会社の看板を借りてビジネスを行っているのです。不動産会社はエージェントが受け取るコミッションの一部を受け取るという仕組みになっています。
会社とエージェントのコミッション(手数料)の分け方は、会社によって異なるため一概には言えませんが、一般的には、基本は50%ずつです。さらに売り上げが上がると、エージェントの取り分も上がるという仕組みです。
例えば、10万ドル(約1000万円)以上売った場合、エージェント側の取り分が60%になるケースもあります。スライディングスケール、いわゆる「スライド制」で上がっていくと言えば分かりやすいかもしれません。
エージェントは個人事業主ですから、基本的に、広告宣伝費、物件の写真撮影、オープンハウスを開くパーティー経費、接待交際費、移動費・交通費などの必要経費は、全てエージェントの実費負担となります。不動産会社側が負担するのは、会社のブランディング(会社の看板など)、オフィススペース、情報システム、リスティングシステムなどに限られます。
顧客獲得については、基本的にエージェント自身が単独で集客を行います。集客方法として有効なのは、自費で広告宣伝費を使い、売りや買いのリスティング広告を取ることです。それ以外にも、SNS活用など様々な集客方法の中から、競合ひしめく不動産業界で、エージェントとして生き残るための戦略を練る必要があります。
日本では、「個人」よりも「会社」を信頼される方が多いのではないでしょうか。会社の規模によって、顧客が安心して問い合わせをすることが多く見られます。しかし、結局のところ、「カスタマーエクスペリエンス(CX)=顧客体験価値」の充実度は、その担当者によるところが大きいのではないでしょうか。そういう意味では、アメリカにおける、優秀なエージェントに顧客が集まるというシステムは、当たり前だと言えるでしょう。
不動産エージェントは、会社に集客を頼れないシステムです。この不動産業界で成功するためには、エージェントは自分自身のプロモーションを行うことが非常に重要です。自分をプロモーションしていくことを、アメリカでは、「セレブリティーエージェントのマーケティングモデル」などと呼びます。
会社側からの視点で不動産仲介ビジネスを見ると、この業界のビジネスの成功は、「いかにして優秀なエージェントを獲得できるか?」ということに尽きるのではないでしょうか。
アメリカと日本の仲介システムのもう一つの大きな違いは、「スペシャリストの文化」である点です。冒頭でご紹介した、開業に有利な資格があることからも分かるように、日本では、不動産仲介会社が物件仲介だけでなく、ローンの斡旋から契約書の準備、会計の知識に至るまで、すべてを提供することが当たり前になっています。
では、アメリカの不動産業界についてご説明しましょう。日本のシステムとは大きく異なります。ローンの斡旋はローンのブローカー、契約書に関しては弁護士、会計は会計士がアドバイスを行うという具合に、それぞれのスペシャリストが取引に関わるという分業制になっています。
それと同様、不動産デベロッパーと仲介の関係も、スペシャリストのシステムで成り立っています。例えば、日本では、大手会社が自社で不動産を建設し、自社で販売するというケースがほとんどと言えます。しかし、ニューヨークの場合、デベロッパーは建てる専門家として建てる事に集中し、売るファンクションは別の不動産仲介会社を雇うというのが一般的です。アメリカでは、建てるスキルと売るスキルは全くの別モノと考えるからです。
売ることは、売るスキルが高い人を雇う方が生産性が上がるという考え方です。逆に、売る会社は売ることだけをやっているので、どういったものが売れるのかなど、顧客のニーズをよく把握しています。
デベロッパーは、仲介会社を初期からアドバイザーとして雇い、プランから一緒に立ち上げていきます。その代わり、立ち上がったら、その仲介会社を使って売却するということです。このように、分業がはっきりしているのが、アメリカの不動産仲介システムです。
今回は、アメリカと日本の不動産仲介システムの大きな違いについてご説明しました。ご参考になりましたでしょうか。
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