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ニューヨーク不動産仲介のトップチーム
今回は、ニューヨークの商業不動産を購入する際の「デューデリジェンス」に関してお伝えします。不動産におけるデューデリジェンスとは、買主が不動産物件の内容を詳細に調査することです。近年では、日本国内でも、当たり前のように行われるようになってきました。
レジデンス物件取引のように「ディスクロージャー(情報開示義務)」が定着していないので、デューデリジェンスのプロセスは商業不動産取引においては重要です。
デューデリジェンスは、弁護士・公認会計士・不動産鑑定士・インスペクターなど、それぞれのスペシャリストに依頼するのが一般的です。
「商業不動産」には、下記のように大まかに4つのカテゴリーがあります。
これらの商業物件のデューデリジェンスは、コンドミニアムやタウンハウスなどのレジデンス購入時よりも多項目に渡ります。
ニューヨークの商業不動産を購入する際、何も問題がないというケースはかなり稀なことです。ですから、このデューデリジェンスは非常に重要で、不動産取引を進めるかどうかの判断を下すことができるまで、徹底的に調査する必要があります。
ニューヨークの商業不動産購入時にデューデリジェンスを実施する際には、主に以下のような項目をチェックします。
それでは各項目を見ていきましょう。
「タイトルレポート」とは、不動産の権利関係に関する調査書のことを言います。通常、タイトル保険会社によって作成されます。
「タイトル保険会社」とは、日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、アメリカでは一般的で、不動産物件の所有権(タイトル)に対する保険を発行してくれる会社のことです。
日本には登記簿謄本がありますが、アメリカには登記簿のような仕組みはありません。そのため、タイトルレポートは、物件がどのような状態で保有されているかが分かるようになっているのです。
アメリカにおける不動産取引において、タイトル保険会社が発行するタイトルレポートは重要な役割を担っています。
このレポートには、主に以下の内容が載っています。
例えば、決済を行うにあたって、消滅させる必要のあるローンやその他の抵当などの情報が記載されています。また、土地のサイズが登記と合っているかを確認するためにサーベイ(測量)も行います。
このレポートを取得するには、1週間ほど時間がかかります。
「Certificate of Occupancy (入居許可証) 」には、それぞれのフロアの使用目的が記載されています (レジデンス、オフィス、商業用など)。レジデンスであれば、各階のユニット数などの表記もあります。現状とC of Oに差異がないかを調べます。
タイトルレポートには、行政からの違反チケットの有無なども含まれています。ニューヨーク市は、建設局、保健局、消防局、環境保護局、環境管理委員会、交通局など、管轄が多部署に分かれています。これらの行政機関からの違反チケットがないかどうかを調査します。
もし違反チケットが見つかった場合、その違反が大きな問題でなければ、その違反チケットを取り去る為に必要な費用などを、購入金額から差し引く交渉ができます。
売主の責任において違反の解決を図りたいのであれば、ある程度エスクロー口座に金銭を残しておき、問題が解決した時点で残金をリリースするという方法を提案することもできます。
タウンハウスなどを購入する際には、ラドンガスのチェック、アスベスト、鉛ペイント、カビの検出、地下に埋まっているオイルタンクの検出などの環境調査を行います。商業ビルでも同じような項目をチェックしますが、一番重要なのは「土壌汚染の有無」です。
この環境調査レポートで土壌汚染があると判定されると、より精密な調査を行うことになります。これには専門の研究所による土壌の化学物質の分析や、地下水の水質調査なども含まれます。
ニューヨークには「家賃安定化法」が存在します。既存の住宅を手頃な価格に保つことを目的としています。その規制に該当するテナントを「レントコントロールテナント」、「レントスタビライゼーションテナント」と呼びます。
この規制は色々と詳細に定められていますが、このトピックだけで一つのブログになる程、ほぼ毎年何かしらの変更が加えられています。直近では、2021年6月、家賃ガイドライン委員会において、家賃の1.5%の値上げ案が可決されていますので、こういった変更点のチェックも必要です。
レントコントロール、レントスタビライゼーションのテナントを借りる際には、過去に遡り、注意深く分析しましょう。
以前の大家さんが、これらのテナントに大してオーバーチャージなどの違反行為をしていないか、また、現在のフリーマーケットテナント (規制のないテナント) は正しいプロセスでそれが行われたか、などをリースやDHCR (これらを規制しているニューヨークの行政部門) の記録などを参考にチェックすることが重要です。
一般的なリースの確認です。特に商業テナントのリースの場合は、注意深く読み込むことが必要です。商業物件のリースには、その物件が再開発の対象となった場合の立ち退き条項の有無、途中キャンセル条項、保証人情報など、注意すべき項目が多数あります。
売主から提出される資料に対して、さらに深く調べる際には、「Estoppel Certificates (禁反言証明書)」を取得することもあります。これは、リースの期間や保証金の額、現在の係争やクレームがないかなどを、テナント本人から確認を取るプロセスです。
増築を行うときなどは、「ゾーニング分析」を行います。ゾーニングとは、地域や建物を用途や帰納によって区別し、位置関係を定めることを言います。
都市計画において、住居・商業・工業などに分類し、土地を区分して指定することがあります。ゾーニング分析をすると、現在のビルがゾーニングの規定にあっているかなどを調べることができます。
商業不動産専門のインスペクター(調査人)によるビルディングインスペクションを実施します。不動産に重大な欠陥がないか、水漏れ、ひび割れなどのコンディション、行政の建築コードに違反している所がないか、などのチェックです。
また、「インスペクションレポート」には、屋根、ボイラー、燃料タンクなどのメインアイテムの調査結果も記載されます。あと何年ぐらい持つかなどの意見が添付されることもあります。
専門的な言葉がたくさん登場しましたが、ご参考になりましたでしょうか?ニューヨークの商業不動産を購入される方は、このデューデリジェンスをよく理解することがとても重要ですので、パンチリストとしてご利用頂ければと思います。
なお、分かりにくい点やご質問がございましたら、私どもブルーパシフィックキャピタルにお気軽にお問い合わせください。