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ニューヨーク不動産仲介のトップチーム
国内最大手の不動産ポータルサイトのZillow は同社が満を期してスタートした不動産転売ビジネスである ”iBuyers” をクローズする事を発表しました。
“iBuyers” これは不動産テック会社などの機関投資家がアルゴリズムを用いて将来の不動産の売買価格を予想し、購入し、それを転売して利益を出すというビジネスモデルです。 この不動産テック会社のiBuyersがマーケットに参入する前は、個人の投資家を相手にした”flip house for profit”セミナーが流行り、多くの投資家が手直しの必要な家を購入し、リノベーションした後に転売して売るビジネスに参入しました。 数年前にこの利益に注目してテック会社などが多額の資金とともにマーケットに参入しました。 テック会社の武器はビッグデータと多額の資金でした。
しかしこのビジネスはすぐに多額の資金流出を招きました。 ビジネスの中止により、Zillow は現在抱えている在庫の処分を始めていますが、抱えている66%の不動産在庫は買った値段よりも低い値段で取引されるようです。 Zillow がこのiBuyer ビジネスをスタートしたのはつい最近のことですが、このビジネスで計上した損失は500ミリオンドル(約550億円)にも上ります。 Zillow は国内で一番多くのデータを保有するテック会社であり、そのZillow がこのビジネスを成功させられないと言う事は、他の競合会社(iBuyers)である Opendoor やOfferpadはこのビジネスを成功させることができるのか? との疑念が広がりました。 Zillow は今回の決断について”マーケットが予測できない為”と発表しているが、理由は多大なオペレーション損失から来ているは確かで、今のアメリカの歴史的な不動産価格上昇の局面でさえ、多額の損失を出していると言うことは余程このビジネスモデルがマーケットにフィットしていないかという事が伺えます。この転売ビジネスモデルの鍵の一つは、リノベーションが必要な案件を現金で安く買い、リノベーションをして転売すると言うことです。
数年前にZillow がこのビジネスをスタートさせた際にはテキサスのフェニックスエリアから始めました。 理由はテキサスの家は同じような企画の家が続いており、価格を予想しやすいと言う事でした。しかし、他のマーケットに拡大していった際に問題が発生してきていました。それはNYなどの都市では家の企画もデザインも様々で、価格を予想するのが難しいと言う事です。
また多くのビッグプレーヤー(機関投資家)がこの中古不動産マーケットに参入した事でマーケットが飽和してきている事も挙げられます。 Zillowの他にもiBuyer の競合は存在し、さらにテック会社だけではなく、不動産仲介会社もこのリノベーション費用のニーズに注目し、仲介媒介取得の代わりにリノベーション費用の貸付サービスを売主に提供するなどの戦略を採用しています。 また不動産系だけでなく、金融会社であるブラックストーンなども投資会社を通じて大量に中古の家を買っています。
総じて失敗の原因は不動産のローカルの知恵をビッグデータではカバーできなかった事とマーケットが飽和してきている事が挙げられると思います。 オペレーション上の失敗:テック会社によくありがちな、リアルサイドのオペレーションがうまく行かなかったのではないかと言うこと。 ボロボロな家を購入した後のリノベーションは、データではなく、住まいのセンスが必要で、特にNYのようなそれぞれの不動産がユニークなマーケットでは家とエリアにあったリノベーションをする事が必要ですが、そのローカルの知恵をデータでカバーする事ができなかった事が挙げられると思います。株を買って転売するのと違い、不動産の買値は人の感情を反映する商品なので、家の放つバイブまで読み取らないといけません。そこを読み切るだけのビッグデータが集まっていないという事でしょう。 後は飽和しつつあるマーケットで、売り上げを達成する為に無理な価格で買っているという事です。 価格を予想できなかったというよりも、データを無視して買い進めていたのか?? いずれにしてもまずいオペレーションですね。
この結果を受けて、Zillow 社の株は 約40%下がりました。 さてこの巨大な不動産ポータルサイトの利益創出はどこに向かっていくのでしょうか。 以後、注目が集まります。